アルジャーノンに花束を・感想【小説】

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この記事は約7分で読めます。

ダニエル・キイス先生の
アルジャーノンに花束を
の感想を書きたいと思います。










※内容のネタバレしています。これから読む方は気をつけて下さい。

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ざっくりあらすじ

これは近代アメリカ文学を代表する名作だと思います。

この話は主人公チャーリイの「経過報告」として彼自身が書いた日記式で進んでいきます。

知的障害を持つチャーリイが、ネズミのアルジャーノンと並行して天才的なIQを手に入れるための手術をし、天才的な頭脳を手に入れその経過を日記に書いていくという物語です。

感想

知能指数の低い序盤は、拙い文章でひらがなを多用していて(日本語訳です)手術後の中盤は天才になるので、読んでいるこちらにも何言ってるかわからないよという難しい言葉や漢字を(日本語訳です)使って日記を書き連ねていきます。

いつの間にか文章が上手くなっていく手法が鮮やかで、これは日本語に訳した人グッジョブだと思います。素晴らしく滑らかに移行していったと感じました。

手術前と手術後のチャーリイの変化として

『他人の悪意に気付く』

『手術後の孤独感』

をターニングポイントとして大きく取り扱っていますが、手術後は知識や知能の急激な上昇に感情が追い付かないという現象が起こり「人を見下す」という感情を覚えてしまいます。

手術前は、彼に対する明らかないじめやからかいにも

「僕のことを構ってくれる良い人」

と認識して、そのいじめっ子に対してもニコニコしています。

が、手術後は

「自分を馬鹿にしていただけ」

という人間の悪意に気付き、手術前の自分と対比して自暴自棄になったりするのがまた切ないところです。

終盤になると、一足先に手術を受けたアルジャーノンが急激に頭脳衰退していくのを目の当たりにして、チャーリイ自身もいずれこうなっていくことを悟ります。

やがてアルジャーノンも亡くなってしまいチャーリイも頭脳衰退の予感に恐怖感を抱くのですが、実際に衰退していくと恐怖感があったことすら忘れていくという、見事な書き方をしていました。

手術後に衰退した頭脳は、手術前のときよりもその現象が酷くなるということもあって終盤になるとチャーリイの経過報告は誤字脱字が序盤よりもあからさまに酷くなってしまいます。

手術前の純粋な優しさは手術後には失われ手術前の人を和ませる力も手術後に失われる。

手術後は狡猾さと孤独感を覚えてしまいまた他人を見下すことも覚えてしまう。

この精神的な移ろいが人間味溢れる部分ではありますが、性格の良さに反比例して頭脳は衰退し狡猾になるほど優しい心が失われていく様は読んでいてつらいところでした。

また術後にアルジャーノンが死んでから自分の頭脳が衰退していく様を察して恐怖できていたのに、時間が経つとその感覚も失われていく過程は、チャーリイの精神はもとより身体的にも負担だったのではないかと思います。

脳手術をするように勧めたニーマー教授に

「人間的な愛情の裏打ちのない知能や教育なんてなんの値打ちもない」

と、自分の出した答えを語る部分は圧巻でとても切なかったです。

手術後から衰退していく際に精神科医のアリスに

「あなたには、私たちに尊敬する心を起こさせるような何かがあった。そうよ、たとえああであってもよ」

と術前の純真だった心を懐かしまれるのも皮肉で切ないです。

最後は『同志』であったネズミを思いつつ

「うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください」

と、教授に充てた手紙に一文を書いて終わります。

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